亜鉛が髪の毛の成長や健康に重要な役割を果たすことは広く知られていますが、実は「白髪」との関係についても注目されています。白髪は、髪の毛に色をつけるメラニン色素を作り出す細胞「メラノサイト」の機能低下や減少によって起こります。では、亜鉛はメラノサイトやメラニン色素の生成にどのように関わっているのでしょうか。メラニン色素は、チロシンというアミノ酸を原料として、チロシナーゼという酵素の働きによって生成されます。このチロシナーゼの活性には、銅イオンが必要とされていますが、実は亜鉛も、このメラニン生成プロセスにおいて間接的に関与している可能性が指摘されています。例えば、亜鉛は細胞の分裂や増殖を助ける働きがあるため、メラノサイト自体の健康維持や機能維持に貢献していると考えられます。メラノサイトが元気に活動していれば、メラニン色素もスムーズに生成されやすくなります。また、亜鉛には抗酸化作用もあり、活性酸素による細胞のダメージを防ぐ効果が期待できます。メラノサイトも活性酸素によるダメージを受けやすく、これが機能低下の一因となると考えられているため、亜鉛の抗酸化作用がメラノサイトを保護し、白髪の進行を遅らせるのに役立つ可能性も示唆されています。さらに、亜鉛不足がチロシナーゼの活性を低下させるという報告もあり、これがメラニン生成の妨げになることも考えられます。ただし、現時点では、亜鉛を摂取すれば確実に白髪が予防できる、あるいは白髪が黒髪に戻るといった明確な医学的根拠は確立されていません。白髪の原因は、加齢、遺伝、ストレス、栄養不足、特定の疾患など非常に多岐にわたるため、亜鉛不足だけが全ての原因ではないからです。しかし、亜鉛が髪の健康維持に不可欠なミネラルであることは間違いなく、バランスの取れた食事を通じて適切な量の亜鉛を摂取することは、白髪予防を含めた総合的なヘアケアの一環として重要と言えるでしょう。過度な期待は禁物ですが、健康な黒髪を維持するための一つの要素として、亜鉛の役割を理解しておくことは有益です。
— かつら —
亜鉛で白髪予防?髪の色素との意外な関係
2019年12月3日