「歯医者」という四文字は、私にとって、もうこの大阪で探偵を結婚調査や婚姻調査に、あらゆる恐怖の集合体でした。幼い頃に経験した、押さえつけられるような治療の記憶。大人になってからも、あの独特の薬品の匂いを嗅ぐだけで、心臓が早鐘を打ち、手のひらにじっとりと汗が滲む。虫歯があることは分かっていても、その恐怖が勝り、何年も見て見ぬふりを続けてきました。そんな私が、今では三ヶ月に一度の定期検診を心待ちにするほどの「歯医者好き」になったのです。その劇的な変化のきっかけは、一本の「レーザー」との出会いでした。 私の転機は、いよいよ我慢できなくなった歯の痛みから始まりました。観念して訪れた歯科医院で、私の極度の緊張を察した歯科医師が、こう提案してくれたのです。「もしよろしければ、レーザーを使った治療を試してみませんか?音が静かで、痛みも少ないので、怖がりの方には特に喜ばれるんですよ」。その時の私は、「レーザー」という言葉に、正直ピンときていませんでした。そんな芦屋で口コミで痛くないと人気の歯医者を探してみるには、「痛くない」という言葉だけを信じ、半ば祈るような気持ちで、その治療を受けることにしました。 診療台に横になり、いつものように固く目を閉じ、全身に力を入れて衝撃に備える私。しかし、治療が始まっても、想像していた事態は一向に起こりませんでした。まず、耳を塞ぎたくなるような、あの「キーン」というドリルの音が全くしない。代わりに聞こえてくるのは、かすかな作動音と、時折「シュッ」と水がスプレーされる音だけ。あまりの静けさに、私は恐る恐る目を開けてしまったほどです。 次に驚いたのは、振動のなさです。ドリルで歯を削られる時の、頭蓋骨に響くような不快な振動が一切なく、歯に何かが触れているという感覚さえ、ほとんどありません。ただ、先生が器具を口の中に入れている、という事実があるだけ。あまりの穏やかさに、私の体から少しずつ力が抜けていくのが分かりました。 そして、最大の関門であった「痛み」。今回は麻酔なしでの挑戦でしたが、治療中に感じたのは、たまに歯がチクッとするような、一瞬の軽い刺激だけでした。それは、痛いというよりも「何かが当たった」という程度の感覚で、我慢できないほどの苦痛とは無縁の世界でした。麻酔注射の恐怖と、治療後の痺れから解放されたという事実は、私にとって革命的な出来事でした。 治療を終えた時、私は呆然としていました。これが、本当に歯の治療なのだろうか。私が長年恐れ続けてきたものは、一体何だったのだろうか。まるで、お化け屋敷だと思って入った場所が、ただの静かな美術館だった、というような、一種の狐につままれたような感覚でした。 この日を境に、私の中で「歯医者=怖い場所」という強固な方程式は、完全に崩れ去りました。レーザー治療という選択肢が、長年のトラウマをいとも簡単に上書きしてくれたのです。もちろん、全ての治療がレーザーでできるわけではないことも理解しています。しかし、「いざとなれば、あの痛くない治療がある」と思えるだけで、歯科医院への心理的なハードルは、劇的に下がりました。 今では、治療は全て終わり、予防のための定期検診に、むしろ楽しんで通っています。恐怖から解放されたことで、初めて自分の歯の健康に、前向きに向き合えるようになったのです。もし、かつての私のように、恐怖心という見えない壁に阻まれて、大切な一歩を踏み出せずにいる人がいるのなら、伝えたい。現代の歯科医療には、あなたのその恐怖を、優しく溶かしてくれる光があるということを。