シャンプーをするたびに指に絡みつく抜け毛の数に、一喜一憂していませんか。もちろん、抜け毛の量が急激に増えることは、薄毛の進行を示す一つの指標ではあります。しかし、より深刻で、見逃してはならない「禿げる前兆」は、抜け毛の「量」よりも、その「質」の変化に現れます。健康な髪の毛には、「ヘアサイクル」と呼ばれる寿命があります。髪の毛は、成長期(2~6年)、退行期(約2週間)、休止期(3~4ヶ月)というサイクルを繰り返しており、休止期に入った髪が自然に抜け落ちるのは、ごく正常な生理現象です。この時、寿命を全うして抜ける髪は、太く、しっかりとしたコシのある「正常毛」です。問題となるのは、このヘアサイクルが、何らかの原因で乱れてしまった場合です。特に、AGA(男性型脱毛症)などでは、髪が十分に育つべき「成長期」が極端に短縮されてしまいます。その結果、まだ細く、短い、生まれたばかりのような未熟な髪の毛が、成長しきる前に抜け落ちてしまうのです。これが、薄毛の危険信号である「質の悪い抜け毛」の正体です。もし、あなたの抜け毛の中に、明らかに他の毛よりも細く、弱々しい毛や、数センチ程度の短い毛が目立つようになってきたら、それはヘアサイクルが乱れ始めている明確な証拠です。太く長い毛が抜けるのは、いわば寿命を迎えた大人が亡くなるようなものですが、細く短い毛が抜けるのは、本来であればこれから成長するはずだった子供が、早くに亡くなってしまうようなものです。これが続けば、髪全体のボリュームが失われ、地肌が透けて見えるようになるのは時間の問題です。排水溝に溜まった抜け毛の数を数える前に、まずはその一本一本をよく観察してみてください。そこに、あなたの髪の未来を左右する、重要なメッセージが隠されているはずです。