男性型脱毛症、通称AGAはどこから始まるのか。この疑問は、髪の変化に気づき始めた多くの男性が最初に抱く不安の核心と言えるでしょう。結論から言うと、AGAの始まり方には代表的なパターンがあり、主に額の生え際か頭頂部のどちらか、あるいはその両方から進行することがほとんどです。まず、額の生え際から後退していくタイプは、いわゆる「M字ハゲ」と呼ばれる状態です。鏡を見たときに、以前よりも額が広くなったように感じたり、こめかみ部分の剃り込みが深くなったりするのが特徴です。髪をかき上げたとき、生え際のラインがアルファベットのMの字に見えることからこの名で呼ばれています。もう一つの代表的なパターンは、頭のてっぺん、いわゆる頭頂部から薄くなる「O字型」です。こちらは自分自身の視線では確認しにくいため、家族や同僚からの指摘で初めて気づくケースも少なくありません。合わせ鏡で確認したり、スマートフォンのカメラで撮影したりして、頭頂部の地肌が透けて見えたり、つむじ周りの髪の毛が細く弱々しくなり、渦が不明瞭になっていたりすることで自覚できます。なぜ、この二つの部位から薄毛が始まるのでしょうか。それは、AGAの主な原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンの影響を受けやすい男性ホルモンレセプターが、前頭部と頭頂部の毛根に特に多く分布しているためです。一方で、側頭部や後頭部の毛根にはこのレセプターが少ないため、AGAが進行しても髪の毛が残る傾向にあります。どちらのタイプから始まるかは遺伝的要因などによって個人差が大きく、また、M字型とO字型が同時に進行していく混合型のパターンも存在します。自分の髪の変化がどのタイプに近いのかを客観的に把握することが、AGAの初期段階を認識し、適切な対策を講じるための重要な第一歩となるのです。