知っておきたい薄毛対策

2025年9月
  • 私が市販の白髪染めをやめた日

    生活

    私のバスルームの棚には、いつからか数種類の市販の白髪染めが常備されるようになっていた。30代後半から気になり始めた白髪は、40代を迎える頃には、生え際や分け目にくっきりとその存在を主張するようになった。美容室に行く時間もお金ももったいない。そんな思いから、私は手軽な市販の白髪染めに頼り切っていた。二週間に一度、まるで義務のように、ツンと鼻をつく匂いのするクリームを髪に塗り込む。その手軽さが、当時は何よりの魅力だった。しかし、その代償は、静かに、しかし確実に私の髪と頭皮を蝕んでいた。いつからだろうか。髪を洗うたびに、指に絡みつく抜け毛の量が増えたのは。あんなに自信があった髪のボリュームは失われ、ドライヤーで乾かしてもトップはぺたんこ。何より辛かったのは、常に頭皮が乾燥し、時折無性にかゆくなることだった。ある日のこと、合わせ鏡で自分の後頭部を見た私は、息を呑んだ。分け目を中心に、地肌が思った以上に透けて見えたのだ。「はげてる…?」その言葉が、頭の中で何度もこだました。ショックだった。白髪を隠すためにやっていることが、私から髪そのものを奪おうとしている。その事実に気づいた瞬間、私は棚にあった全ての白髪染めをゴミ袋に叩き込んだ。そして、震える手で、評判の良い美容室を予約した。美容師さんは、私のボロボロになった髪と荒れた頭皮を見て、何も言わずに優しく頷いてくれた。そして、頭皮に薬剤をつけない「ゼロテク」という技術で、低刺激のカラー剤を使って丁寧に染めてくれた。仕上がりの美しさはもちろん、頭皮が全くヒリヒリしないことに感動した。あの日、市販の白髪染めをやめた日から、私のヘアケアは一変した。時間はかかるけれど、頭皮をいたわることの大切さを知った。鏡を見るのが、もう怖くはない。